このゲームのテーマは「純愛」らしいが、それとはおよそ似つかわしくない暗黒社会が舞台となっている。
ストーリーはふとしたきっかけから組織の一員として生きることを余儀なくされた少年、東 玲二と記憶を消され暗殺者として生きる少女、アインとの出会いから始まる。始めはこのダークな世界観のどこに「純愛」なんてテーマが盛り込まれているんだと疑問に感じていた。
しかしストーリーが進むにつれ、この物語のテーマは間違いなく「純愛」だと感じるようになった。
それは登場人物の心の揺れ動きに垣間見れる。
決して表立った感情を見せなかったアインが、玲二と接するうちに微妙ではあるが次第に喜怒哀楽を見せるようになる。
ホッとする反面、それが真意かどうかが分からずに一人悩む玲二。
姉を殺された孤独な少女、キャルとの出会い。
始めは疎ましかったが彼女の無垢な明るさに次第に心を開き、守るべき大切な存在に変わってくる。
しかし別れは突然やってくる。
その誤解が新たな悲劇を生む。
アインもキャルも二人とも守りたいと願う玲二。
しかしそれは叶わない。
非情な選択を迫られる。
大切な人を守る一方で大きなものを失う玲二。
そこには不純な動機は存在せず、まさしく「純愛」そのものだと感じた。
その反面、純粋すぎるがゆえの哀しさに切なくなった。
このゲームのエンディングは複数あり、全て見たが真にハッピーエンドと感じたものはなかった。
ただアインのエンディングで彼女が見せた笑顔。
あれだけで全て救われた。
僕はゲームでこんなに心を動かされたのは初めてだ。
これはゲームを超えた一つの作品だと言い切ってもいい。
多くの人にこの世界観に触れて欲しいので星5つ。
(紅月夜 2004年01月30日) from Amazon Review