地雷と名高い独太、ボリューム不足のアナザーと、DSのAVGは期待の割にはパっとしないもの続きだった。そんな迷走の目立ったDSのAVGに、やっと光明が見えた。しかも水準以上のレベルを伴って。

「仮面幻影殺人事件」は、もともとは携帯アプリ用AVGとして地味な人気を集めていた癸生川シリーズの最新作にあたる。アプリ版「仮面幻想殺人事件」より後の物語となっているが、携帯アプリを知らずとも問題なく楽しめるストーリーになっている。
驚かされるのが、DSのAVGで理想としていたタッチパネル操作が、理想以上の快適さで実装されていた事。メッセージ速度・セーブ・フォントなど、細かい部分の調整が隅々まで行き届いており、まさに至れり尽せり。
DSの離れた2画面を、ネットゲームの世界と現実の世界に分けて処理するアイデアも秀逸。仮想と現実が錯綜する物語の演出として、非常にピッタリとマッチしている。
BGMやSE、演出も高い水準で作られており、いやがおうにも臨場感が高まる。

そして、肝心のストーリー。
「少年犯罪」と「ネット」を軸に、タブーとも言える内容にまで踏み込むシナリオは、時には傷みも伴ってプレイヤーを驚かせる。あまりにも直球なので賛否両論はあると思うが、ここは好みの良し悪しなので仕方がない。
マスコミや雑誌が意図的に取り上げない問題点を毒をもって切り捨てるシナリオは、完全に大人向けの風刺レベル。中高生に分かるかどうかは疑問だが、だからこそ若い世代に向けられたメッセージなのかもしれない。

キャラクターデザインに気迫がないのが難点だが、中味が思いのほかヘビーなので、これで釣りあいが取れているのかもしれない。
骨太のAVGを味わいたい人に、ぜひ。
(beard 2005年03月25日) from Amazon Review

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