ランダムに描かれる季節ごとに、キャラクターたちの距離感や歩鳥の髪型の変化など、アルバムを覗くような読み方が出来るのが「それ町」のひとつの特徴である。物語の完成度は言わずもながな、こういう仕掛けも単純に楽しい。
しかし、そんな構成の中で98話の「エピローグ」のような終わりを垣間見せる話を持ってこられると、もう既に終わってしまった出来事であるかのような切なさが作品全体に波及する。
漫画の中に「現在」という時間軸がない以上、もはや全てのエピソードが過去の思い出なのかもしれないのだ。
そう考えると、終わって欲しくないと願うことさえ叶わないことのようにも思えて、これまでにない寂しさを覚えた巻だった。

今巻のような演出は読者の「それ町」への愛情まで仕掛けに利用された気がして、ちょっとズルいよなぁとも思ってしまったが(笑)、改めて大好きな作品であると身に沁みて分かった。

本当に掛け替えのない漫画。まだまだ終わって欲しくない。
(こおろぎ 2013年12月29日) from Amazon Review

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