長かった。分かっていたけれど、本当に長かったように思います。禁断症状とまではいきませんが、それ程までに自分はこの宇宙兄弟という作品に魅了されていたようです。けれど、勿論というべきか、待っていた甲斐はありましたね。ムッタ独特の所々とぼけた、それでいて本質の部分、芯の部分で非常に恰好の良いあのキャラクターを久しぶりに味わうことのできる一冊であり、いくつもの印象的なシーン、行為、言葉が余韻を残す一冊です。

今巻の内容はジョーカーズの中で最も異質、つかみ所のないキャラクターであったカルロのエピソードを中心に展開されていきます。彼が無断で、クルーからの離反ともとれるような行動を起こしている一方、ジョーカーズの方ではカルロの失踪を受けてバックアップクルーに前巻から登場していたこれまた奇妙なキャラクター、モッシュのメンバー入りが近づいていくのですが、どうしてか上手く説明する事の出来ない決定的な違和感を覚えてしまいます。モッシュのキャラクターが面白いかと訊かれれば我々読者は、『はい』、と答える他ない(酷く機械的で事務的な奇妙なリズムの持ち主)し、カルロが今迄決定的な存在感を放っていた訳でもないのに関わらず、そのような違和感と不安は消えません。特にジョーカーズの中でカルロの存在がそこまで重要な立ち位置にあるとは思えていなかったのに、どうしてか淋しさを感じます。ジョーカーズがジョーカーズではなくなってしまうような、小さくまとまってしまうような、少しずつリズムが崩れていくような、そんな淋しさと不安です。小山さんは、そういった人物のアニメイト、関係の構築が本当に上手なのだなと再確認しました。一見まとまりのないように見えたチーム、個々が個々のキャラクターのままに生きているチームにあって、ミステリアスな存在としてのカルロが、自身の本質と向き合う姿がその思いを強めます。ただ、クルーにとっては謎の存在で在り続けること、軽い存在のように見せていることこそが彼の恰好良さなのかもしれません。ただ、そのせいで彼が復帰する線はより薄くなる訳ですが、ううむ。宇宙兄弟特有の波ですかね。どうなるのか、現実的な作品にあって、この展開だとカルロ復帰の希望はあまり見えないように思いますが、読者としては予定調和を感じさせないという点で非常に楽しめます。

もう一つ。... 続きを読む
(sunbrainy 2014年09月22日) from Amazon Review

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