本作は、まさにサウンドノベルの至高とも言える出来ばえだ。

前半の午後に至るまでは、やや重苦しく物語も伏線をはるだけの
流れのため苦痛を伴う。ここで投げてしまう人がいるのも頷ける。

しかし、物語が動き始めると徐々にもっと先を見たいという衝動に
襲われ始める。
そしていつかどっぷりとはまり込んだ自分に気づかされるのである。

この作品の素晴らしいのは、伏線のはり方とその回収である。
たとえばある人物が現れ、話を進めている登場人物と会話を始める。
たわいのない会話だ。
そして、この現れた人物が、その人物なりの一日を過ごしながら後半に
改めて重要なネタを持って現れたりする。
さらに驚くべきことに、その人物を登場させるためになにげなく会話した
内容までもが伏線であり、後のストーリーに影響を及ぼす。
なんとも計算された内容に唸る。

あと、先が読めるという意見もあるだろうが、そのとおりである。
しかし、この作品が素晴らしいのは、先が読める部分を出し惜しみしない。
という点にある。
「あ、もしかしてこうなのかな?」なんて思ったことが、後半になってネタ
ばらしするのではなく、案外あっさりとそのネタをさらす。
先が読めるのではなく、先を読まされている演出といえるかもしれない。
だからプレイヤーは次に気になったことの先を読み出すのだが、それが
読めたころにゲームはネタをさらす。こんな展開が続くのだ。
私はとりこになり、完全に脚本の手の上で転がされている感覚を愉しんだ。
久しぶりに終わるのが嬉しくも寂しい思いをするゲームに出会えたと思った。

そして最後にどうしても書いておかなといけないのがクリア後の特定条件の
栞で入れる我孫子氏が担当した亜智の妹の話だ。
本編の感動の後に読めば、まさに涙の止まらない珠玉のサイドストーリー
である。

残念なのは、もうひとつのボーナスシナリオは、苦痛でしかない点である。... 続きを読む
(OKUPI 2015年02月22日) from Amazon Review

この口コミ&評価は参考になりましたか?はい いいえ
399人中、229人の方が「この口コミ&評価が参考になった」と投稿しています。